地域漁業研究
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論文
「2010年チリ地震津波」発生時におけるわが国の漁業協同組合の対応とその課題
林 紀代美青木 賢人
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2010 年 51 巻 1 号 p. 109-128

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抄録

本研究では,2010年チリ地震津波の発災時に津波警報,津波注意報が発表された沿岸域に位置する全国の漁業協同組合(以下,漁協)を対象として,彼らが取った津波回避対応や津波に対する認識と,そこにみられる防災上課題となる事項や改善を要する側面を明らかにすることを目的として,漁協に郵送アンケートを実施した。

その結果,警報レベルが高い地域で,かつ,過去に津波による被災経験を持つ漁協では,気象庁予測に対する受容度がより高い傾向がみられた。一方で,実際には津波警報・注意報が発表され,小規模ながらも津波が来襲していたにもかかわらず,自らの経験と判断から津波災害回避行動に至らなかった漁協も多くみられた。多くの漁協では,漁協が主体的に漁協独自の防災上の課題に対応するためのマニュアル整備や防災訓練の実施がなされていなかった。また,災害情報や津波対応に関わる連絡体制が十分に整っていなかった漁協もあった。漁船の「沖出し」の判断についても,個々の漁業者の責任に依存していた。

漁協に関わる今後の防災活動の課題として,①災害情報の伝達や受容・理解,活用の改善,②地域の関係機関との連携体制の確立や防災訓練の充実,③漁協による津波への対応を考慮した防災マニュアル整備,④漁協内での「沖出し」に関わる判断の事前協議,合意形成,が指摘できた。

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© 2010 地域漁業学会
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