地域漁業研究
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論文
カツオ節2次加工産業の展開過程と原料利用の変容
めんつゆ産業におけるリーダー企業の販売戦略分析を通じて
大富 あき子久賀 みず保佐野 雅昭
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 51 巻 2 号 p. 21-44

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抄録

本研究の目的は,カツオ節2次加工企業の販売戦略に着目し,そこにおけるカツオ節利用の実態とその変化さらには原料に対するニーズの変化を実証的に明らかにすることである。具体的には,2次加工企業によるカツオ節2次製品の製造および販売行動を,時系列的に3期に分けて整理し,企業行動や企業におけるニーズの変化が原料であるカツオ節の利用のあり方をどのように変えていったのかを明らかにした。分析対象は,カツオ節の2次加工品・簡便化商品である「カツオパック」や「顆粒だしの素」にも取って代わり近年急激に市場を拡大してきためんつゆとした。また,めんつゆ産業の初期から現在においてもリーディングカンパニーであるしょうゆ製造企業A社を事例にあげ,しょうゆ企業からみためんつゆ類開発史の分析を行った。

分析の結果,第1にめんつゆ産業は,大量生産による規模のメリットを発揮できる大手しょうゆ製造企業が主導するものとなっており,厳しいコスト競争への耐性がある企業のみが生き残ってきたことが明らかになった。そうしためんつゆ産業の展開の中で,A社はカツオ節煮出し汁の直接的利用に大きくシフトし,A社にとってカツオ節の重要性が高まった。そして第2に,A社は原料であるカツオ節に対し,品質よりも低価格・量的安定性そして製造上技術的に効率のよい一定の規格を満たす品質を要求していることが明らかになった。産地ではこれらの要求に応えられる大規模製造業者が選択され,企業と産地の関係性はより深く固定的となったと考えられる。つまり第3に,カツオ節製造業者が2次加工企業の商品開発や企業間競争,経営上の要請などにより,大きく左右される状況が明らかとなった。

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© 2011 地域漁業学会
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