地域漁業研究
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論文
琵琶湖沿岸域の変遷と漁業者に見る環境保全の役割
香川 雄一
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2013 年 53 巻 3 号 p. 69-94

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抄録

琵琶湖の環境問題は高度経済成長期の後半から注目されてきた。水質の悪化や水不足は日常生活において深刻な問題となる。琵琶湖の環境を誰が守っているのかを考える上で,琵琶湖の歴史や日々の変化を見守ってきた漁業者に注目してみたい。

琵琶湖での漁獲量は一時的な増減がありながらも減少傾向を示している。環境問題が大きく注目された頃には,漁業は減少傾向にあるものの比較的穏やかな減少幅であった。琵琶湖総合開発をはじめとする湖岸の開発や外来魚の問題などによる漁業を支える在来魚介類の減少が,漁獲量減少の原因であると指摘されている。

漁港別に漁業を見ていくと,琵琶湖の変化はここ20~30年間に起きてきていたことが分かる。さまざまな開発事業が実施された結果,湖岸の生活は便利になり,利水のための水資源の確保にも効果はあった。しかし漁業に対する影響を吟味する必要がある。

漁獲量や漁獲高が減少傾向にあるのに加えて,漁業者数も減り続けている。漁業からの転業と漁業者の高齢化が主な理由である。高度経済成長期以降の産業構造の転換,琵琶湖総合開発事業による漁業補償,漁獲高の低減による漁業収入の減少といった,漁業から離職する要因がある。

琵琶湖漁業の衰退は,水産資源を管理してきた人材を失ってしまうことになるかもしれない。琵琶湖の環境管理という観点からも漁業が存続できるような条件の整備が望まれる。

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© 2013 地域漁業学会
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