地域漁業研究
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研究ノート
中国浙江省嵊泗県におけるイガイ養殖業の成立要因
楽 家華増井 好男
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2013 年 54 巻 1 号 p. 55-71

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抄録

中国における養殖イガイの生産量は山東省が最も多く,広東省,福建省,浙江省と続いているが,浙江省の舟山列島に属する嵊泗県のイガイ養殖業のウエイトはすこぶる高く,地域の重要な産業となっている。嵊泗県のイガイ養殖業の発展は,嵊泗県が岩礁域のためイガイの生息に適しており,天然種苗が採捕される条件を備えていた立地要因のあったことに加えて,漁船漁業による漁獲強度が漁業資源の減少をもたらしたために,国および浙江省政府が漁業転換政策を導入し漁船漁業の漁獲強度の抑制を図りつつ,養殖漁業への転換を進めたことが大きな成立要因となった。さらに,中国での所得水準が上昇し,食料消費の質的転換が進み,水産物の需要が高まりイガイの販売市場が拡大したことも重要な成立要因となった。とくに,上海市,寧波市などの大都市が舟山列島に近接した距離にあることも有利な条件となった。また,国内市場が中心であるが,海外市場もわずかずつ拡大しつつある。さらに,養殖漁業の収益性が漁船漁業に比較して高いうえ,労働の強度が漁船漁業よりも軽く,年齢が高齢化しても就業できるメリットも大きい。

イガイ養殖業を今後発展させるためには漁場利用の適正な管理による漁場の豊度を持続させるとともに漁業者の組織的な対応策を図ることが課題であろう。

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© 2013 地域漁業学会
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