悪臭公害の測定・評価において重要な非嗅覚性の三叉神経性刺激について, その発現のメカニズムと知覚特性に関する実験的検討を行った.すなわち, 官能検査法により, 等しい感覚的刺激度をもつ物質濃度 (等価刺激度濃度CE) を16種類の臭気物質について決定した, また, 各臭気物質問のCEの相違と分子の物理化学的特性について若干の考察を行った.その結果を要約すると以下の通りである.
1) 各物質のCEを測定した結果, 解離性物質のCEは非解離性物質に比べて極端に低い.解離性物質では, 酸性物質が塩基性物質に比べて低い値を示した.測定を行った物質のなかで, 不飽和アルデヒドであるアクロレインが最も低い結果となった.
2) CEが最も低いアクロレインは, 刺激性感覚が発現するまでに若干の遅れ時間があり, 他の物質とは異なる傾向を示した.このことから, アクロレインの刺激性感覚の発現機構が他の物質とは異なると考えられた.その発現機構には, 分子の求電子的な反応性が関与していると考えられた.
3) 解離性物質のCEは, 解離定数と関連性を示した.酸, 塩基解離定数が大きい, すなわち解離しやすい物質ほどCEが低い傾向が認められた.