抄録
【目的】
NF-kBの下流因子であるXIAPタンパク質(X-chromosome-linked inhibitor of apoptosis protein)はIAP(inhibitor of apoptosis protein)ファミリーに属しCaspase-3のはたらきを阻害する。一般に細胞生存シグナル伝達系因子のNF-kBタンパク質やXIAPタンパク質はがん細胞で多量に蓄積しているため、アポトーシス誘導が抑制される傾向にあり放射線抵抗性の一因と考えられる。今回、XIAPを標的としたsiRNA(XIAP-siRNA)によってヒト肺がん細胞の放射線感受性が高まるかどうか検討した。
【方法】
p53欠損ヒト非小細胞肺がんH1299細胞に正常型あるいは変異型p53遺伝子を導入した細胞(H1299/wtp53、H1299/mp53)を用いた。21-merのXIAP-siRNAあるいはnegative control siRNAを放射線処理の48時間前にリポソームにより細胞内導入した。コロニー形成法で放射線感受性を、ウエスタンブロッド法でXIAPおよびアポトーシス関連タンパク質の動態を、ヘキスト染色法等でアポトーシスの発現を解析した。
【結果】
1.XIAP-siRNAによりXIAPの蓄積誘導が特異的に抑制された。
2.H1299/wtp53とH1299/mp53細胞でp53非依存的にXIAP-siRNAによる放射線増感効果が見られた。
3.XIAP-siRNAによる放射線増感効果はH1299/mp53細胞の方が高い傾向が見られた。
4.XIAP-siRNAにより放射線誘導Caspase-3活性化が増強された。
【考察】
XIAP-siRNAはCaspase-3活性化の増強を介しp53非依存的な放射線増感をもたらし、その作用は変異型p53がん細胞でより強いことが示唆された。