日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: OR-11-3
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細胞周期・アポトーシス・シグナル伝達
サイクリンキナーゼインヒビターp21の発現安定に関わる分子内領域
*福地 邦彦市村 幸子巽 紘一
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抄録
サイクリンキナーゼインヒビターp21は、DNA損傷に即応して、細胞周期を停止または遅延させ、条件によってはアポトーシスを促進的あるいは抑制的に制御する多機能蛋白である。p21は、遊離している状態では特定の構造をとらず、リン酸化による修飾や、種々の細胞周期制御因子との結合で安定性が制御され、必要のない状態ではプロテアソームで急速に分解される。本研究では、p21の蛋白の安定化機構を解析した。
(1)種々のp21 deletion mutantのtransient expressionを行ったところ、全長164aaのN末側のアミノ酸番号15から48を欠損したmutantの△15-48Cが極めて不安定となった。そして、△15-48Cはプロテアソームインヒビターlactacystinを加えると安定化した。すなわちN末側15-48を含む構造がp21の安定性に必須と考えられた。そこで、N末領域のp21安定化機構の解析を行なった。
(2) N末領域が△15-48Cをtransに安定化するかどうかを確認する目的で、p21N末端1-60または(1-60)×2、(1-60)×3の恒常発現細胞を作成し、△15-48Cを導入したところ、△15-48Cは安定化しなかった。
(3) N末領域のcisの作用を解析する目的で△15-48CのN末に1-60を付加したmutantを作成して発現させたところ、lactacystinの有無に関らず安定であった。この結果は、分子内に1-60領域が存在すればプロテアソーム抵抗性となることを示唆した。
(4) △15-48C の恒常発現細胞を作成し、その発現と機能を解析した。△15-48C はlactacystinで安定化した。また、6Gyのガンマ線照射後に、mRNA量は変化せずに蛋白発現が増加し、CyclinA, Cdk2との結合も増加した。
以上の結果は、p21安定化には2段階、すなわち、15-48領域は、DNA損傷のない安定的な増殖時に必須であり、DNA損傷時には別の機構により蛋白レベルの安定化が起きている機序が推測された。
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© 2006 日本放射線影響学会
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