抄録
石川県では、北陸電力の志賀原子力発電所周辺の環境放射線監視を行うために、発電所周辺の9地点に環境放射線観測局を設置している。この内の1局で平成17年の(1)4から5月及び(2)7月に、降雨等の影響や機器の故障及び誤作動では説明できない空間放射線量の特異的な変動が観測された。ガンマ線スペクトルデータの解析から、核医学診断用RI被投与者(事象(1):Tc-99m、事象(2):In-111)が線量率計に接近したことによる影響であることが判明した。
今後も同様の事象が発生すると考えられることから、本研究ではRI投与患者による空間放射線の変動シミュレーションプログラムを作成し、RI投与患者が周辺の空間放射線変動にどの程度寄与するのかを調べた。シミュレーションの結果は、空間放射線の変動をほぼ再現し、変動の寄与成分(RI被投与者、降雨等)を分離することが出来た。また今回のRI投与患者については約20m離れたところまで空間放射線に影響を及ぼすことが判った。これらは、人体に特に影響を与えるほど高いものではないが、環境レベルでみれば比較的高いレベルの線量率であった。