日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: OR-6-5
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DNA損傷・修復1
DNA-PKによるテロメアDNA末端安定性の制御
*吉田 弘美鈴木 啓司児玉 靖司渡邉 正己
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キーワード: DNA-PK, テロメア, リン酸化
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抄録
 染色体末端のDNA二重鎖断端を含むテロメア領域は、様々な蛋白によりその構造や機能が制御されている。DNA-PKはDNA修復の一つであるNHEJ修復系で重要な役割を果たしているが、テロメアのDNA断端にも存在し、テロメア末端相互の結合を抑制していると考えられている。このようなテロメア構造の維持に、DNA-PKcsそのものが必要であることは明らかにされているが、そのリン酸化活性が関与しているのかどうかは不明である。そこで本研究ではDNA-PK活性阻害剤であるNU7026を用いて、正常ヒト二倍体細胞のDNA-PKのリン酸化活性がテロメアDNA末端の安定性に関与しているかどうか明らかにすることを目的とした。
 まずNU7026処理によるDNA-PK活性阻害能を、抗リン酸化DNA-PK抗体および抗リン酸化ヒストンH2AX抗体を用いた蛍光免疫染色法により検討した。この際、細胞はATMを欠損しているためにヒストンH2AXのリン酸化がDNA-PKのリン酸化活性のみに依存しているAT2KY細胞を用いた。その結果、10μM以上の濃度ではほぼすべてのシグナルが消失したことからNU7026処理によりDNA-PK活性が抑制されていることが確認された。そこで、正常ヒト二倍体細胞にNU7026を継続的に処理したところ、20μM処理細胞で細胞増殖が約1/2に抑制された。異常な細胞分裂像が観察されたことから、10μMおよび20μM処理細胞で染色体異常の解析を行った。その結果、telomere associationやchromosome typeのテロメア末端融合、chromatid typeのテロメア末端融合が未処理細胞より多く観察され、細胞増殖の抑制はテロメア不安定化による分裂傷害が原因であると考えられた。以上の結果から、DNA-PKのリン酸化活性がテロメアDNA二重鎖断端の安定性に重要であることが明らかになった。
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© 2006 日本放射線影響学会
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