抄録
活性酸素種は放射線や酸化剤の投与、細胞内代謝によって常に生じている。活性酸素種によって細胞が過剰な酸化ストレス下にさらされると、核酸やタンパク質、脂質といった生体高分子が酸化され、細胞に細胞死や突然変異を誘発する。細胞には活性酸素種の消去酵素やDNA修復酵素が酸化ストレスに適応するために働いている。このように細胞内の酸化・還元状態のバランスは保たれる必要がある。
酸素分子が一電子還元されると、活性酸素種であるスーパーオキサイドとなり、さらに過酸化水素、ハイドロキシラジカルといった活性酸素種へと変化する。スーパーオキサイド増加によって派生するこれら活性酸素種に対応するため、細胞が行うスーパーオキサイドへの対応は極めて興味深い。
大腸菌ではSodA、SodBといったスーパーオキサイド消去酵素や、カタラーゼが存在する。SodAはスーパーオキサイドを産出するメチルビオロゲンによって誘導されるが、SodBタンパク質は誘導されない。このsodAsodB二重変異株はメチルビオロゲンに高感受性をしめす。またnfoやahpなどの修復、抗酸化に関与する遺伝子が誘導される。スーパーオキサイドによる誘導をおこなうシステムとして、SoxRSタンパク質が同定されている。
本研究室では、スーパーオキサイドによって誘導される遺伝子をLacZ融合タンパク質として発現する株を確立し、soi(superoxide inducible)遺伝子として同定をおこなっている。これらの株のあるものはスーパーオキサイド感受性を示す株も、感受性を示さない株も存在する。今回報告するsoi遺伝子群はすべてSoxRSシステムの支配下にあることが分かっている。SoxRSのシステムは大腸菌をはじめ菌類に特有で、ヒトで保存されていない。しかし細胞が守るべき活性酸素種の標的は、DNAをはじめ、多くの種で同一と考えられる。本研究ではこれらのsoi遺伝子のクローニングと解析を行った。