抄録
昨年度まで我々はセシウム137のγ線により切断されたプラスミドDNAの頻度をリアルタイムPCR法により検出できることを示してきた。スカベンジャーとしてTris-HCl を使用し、0~150Gyの幅で照射した後のプラスミドDNAに対し1003bp、505bp、243bpの各増幅長における増幅のパターンを解析した。その結果、閉環状型(CC)と開環状型(OC)の比率は増幅度が未照射を100%とすると300%にも上昇することがあることが示された。これはCCがPCR増幅をされにくいと解釈することで説明できる。この極大値は細かく測定点を取ると15_から_20Gyになり、電気泳動による結果(約80Gy)とは明らかに異なり、電気泳動法により算定された切断誘発率p=0.2を使用した理論計算とPCRの実験結果との間にズレが生じることが明らかになった。このことはDNAの損傷は予想より多く起こっており、そのため切断誘発率を高く設定しないと合わなくなったのではない課と考えられる。本発表では温度による物理切断を考慮に入れた上で推定が説明可能かどうかを合わせ検証したので報告する。