抄録
[目的] 我々は、ヒトメモリーCD4T細胞に発現するCD43を認識するHSCA-2モノクローナル抗体を用いて、CD4メモリーT細胞が3つの機能的に異なるサブセットに分けられることを報告してきた(J.Immunol,169:39,2002, J.Immunol,172: 7246,2004)。すなわち、CD43の発現が比較的高く成熟した機能を有するM1サブセット、CD43の発現が中程度で、T細胞レセプターの刺激に比較的弱い反応性を示すM2サブセット、ならびにCD43の発現が比較的低くT細胞レセプターの刺激に不応答でアポトーシス起こす傾向のあるM3サブセットである。今回、原爆被爆者のT細胞メモリーの維持を調べる目的で、これらのメモリーCD4T細胞サブセットと加齢および放射線との関係ついて検討した。
[対象および方法]広島の成人健康調査協力者から末梢血単核球を分離し、HSCA-2、CD4、CD45RO抗体を用いた3色フロ-サイトメトリ-にてCD4T細胞中の各サブセットの割合を測定した。癌の既往のある対象者を除いた474名について、年齢、性、およびDS02線量との関係を多重回帰解析にて調べた。
[結果および考察] CD4 T細胞中の各メモリーT細胞サブセットの占める割合は、いずれも加齢に伴い有意に増加していたが性差は認められなかった。また、被曝線量依存性の増加がM2 (P = 0.036) およびM3サブセット (P = 0.059) において示唆された。加齢によってT細胞メモリーを維持する能力が低下することが一般的に知られているが、原爆被爆者ではそのような免疫学的加齢が促進されている可能性が考えられる。