抄録
超音波画像診断は臨床の各分野で幅広く利用されている。また、近年、微小気泡を利用した超音波造影法も注目されている。超音波の生体作用は1)熱的作用と2)非熱的キャビテーション作用、3)非熱的非キャビテーション作用に分類される。超音波と細胞あるいは生体との相互作用を考えるとき、より重要なのは2)における微小気泡の役割である。一定の強度以上の超音波条件では、微小気泡は収縮と膨張を繰り返した後に崩壊する。この時、数百気圧と数千度となり、微視的な極限環境を作り出し、水分子を熱分解する。in vitroの実験系における、このフリーラジカル産生は、放射線類似作用を呈する。微小気泡の振動は、細胞膜に影響し、透過性を亢進する。また、ミトコンドリアに作用し、遺伝子制御された細胞死であるアポトーシスを誘発する。興味あることに、微小気泡の振動と崩壊という、機械的エネルギーは遺伝子発現を変化させることが判明した。最近、当教室で得られた知見を紹介するとともに、安全性の観点から、放射線と超音波の生物作用の比較について述べる。