日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: WS4-1
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紫外線生物影響研究の新たな展開
ヌクレオチド除去修復の品質管理
*松永 司
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抄録
ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair; NER)は、DNA二重らせん構造に歪みを生ずるDNA損傷に働くDNA修復機構であり、その基本反応は大腸菌からヒトまで保存されている。NERは、紫外線で誘発されるシクロブタン型ピリミジンダイマーや(6-4)光産物、かさ高い化学物質の塩基付加体などを基質とするが、この機構の先天的異常は劣性遺伝疾患・色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum)を発症し、太陽光露光部で高頻度に皮膚癌を発生させる。NER反応は、DNA損傷の認識、損傷付近の部分的DNA巻き戻し、DNAの2ヶ所切断、損傷を含むDNA断片の除去、修復合成、再結合と多段階のステップから成り、全行程で約30種ものポリペプチドが関与する。この複雑な反応も、すでに試験管内再構成系が確立されており、基本メカニズムがかなり明らかになっている。近年は、このNER反応の細胞内における調節機構に注目が移っており、修復促進因子の同定、クロマチンレベルでの調節、修復因子の転写および翻訳後修飾による調節など、様々な興味ある知見が得られている。
我々は、DNA損傷に対して極めて高い親和性を示すDDB(damaged DNA-binding protein)が損傷(特にシクロブタン型ピリミジンダイマー)認識に関与し、NER反応を促進することを示してきた。また、DDBに含まれる2つのサブユニットの機能についても詳細に解析し、それぞれ独自の機能も明らかにされつつある。一方、NERとシグナリング経路とのクロストークも最近のトピックスであり、我々は休止期のヒト細胞で起こる不完全なNER反応がヒストンH2AXリン酸化経路を活性化することを見出し、NERの品質管理機構として注目している。本シンポジウムでは、NERの調節機構に関する最近の我々の成果を報告し、NERの品質管理について考えてみたい。
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© 2006 日本放射線影響学会
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