日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: WS4-2
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紫外線生物影響研究の新たな展開
初代培養中枢神経系細胞におけるヌクレオチド除去修復活性
*森 俊雄
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抄録
色素性乾皮症A群およびコケイン症候群はヌクレオチド除去修復 (NER) 機構に欠陥をもつ常染色体劣性遺伝疾患であり、紫外線損傷のピリミジン二量体や一部の酸化的損傷などのDNA損傷に対し修復異常を示す。これらの疾患に共通する特徴として、日光過敏症および神経障害があげられるが、後者の研究が大きく遅れている。頭蓋骨で覆われた脳に太陽紫外線が到達することはないが、酸素代謝が盛んであることから酸化的DNA 損傷が誘発され、その中にはNERの基質となるCyclopurineも含まれると考えられる。それ故、NERに遺伝的欠陥があれば、損傷の異常蓄積により、神経系細胞死を原因とする進行性の神経障害が生じると推測される。そこで本実験では、中枢神経系細胞が保持する本来のNER能力を明らかにすることを試みた。妊娠17日目のラット胎児脳より培養6日目において全体の25 %がMAP2 陽性のニューロン、25 %がGFAP 陽性のアストロサイトからなる混合培養系を確立した。また、対照細胞として、同じ胎児腹部から線維芽細胞を樹立した。ニューロンは樹状突起をもち増殖能は見られないが、アストロサイトは保持していた。混合培養された神経系細胞のNER活性は、細胞マーカー染色後、 (6-4) 型ダイマーの修復動態を蛍光免疫測定して求めた。その結果、ニューロンおよびアストロサイトはNER 活性を保持しているが、その活性レベルは線維芽細胞に比べ有意に低いことがわかった。また、その低さはTFIIH発現量の半減を原因とするNER欠損ヒト細胞 (硫黄欠乏性毛髪発育異常症; TTD2VI) の場合に匹敵した。さらに、局所紫外線照射後におけるNER蛋白(PCNA)の蛍光免疫染色により、ニューロンおよびアストロサイトでは線維芽細胞に比べて明らかに損傷部位に集積するPCNAの量が少ないことがわかった。以上の結果より、中枢神経系を構成する主要細胞はNER蛋白発現量が低いために線維芽細胞に比べNER能力が低下していることが示唆された。
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© 2006 日本放射線影響学会
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