日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W9-2
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マイクロビームを用いた研究の多様性と将来への展開
低線量域における細胞死のメカニズムと照射領域の関係
*前田 宗利冨田 雅典宇佐美 徳子小林 克己
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抄録
[概要] 我々は、放射光単色X線(5.35 keV)マイクロビーム細胞照射装置を用い、低線量放射線の生物影響研究を行っている。本装置の光源である放射光は指向性に優れており、スリットを用いて容易に5ミクロン角以上の任意のサイズのビームを得ることができる。この特徴を利用して、細胞あるいは細胞核の一部などの任意の標的を照射し、それらを個別に追跡して照射効果を検出することができる。我々は、低線量域における細胞死のメカニズムと照射領域の関係を明らかにするために細胞核あるいは細胞全体をX線マイクロビームで照射し、照射された細胞の生存率と周辺の非照射細胞(バイスタンダー細胞)の生存率を測定した。
[方法] 専用のディッシュに2000個のV79細胞を播種し、一定領域(6ミリ角)内の全て、バイスタンダー実験の場合は5個、の単独細胞の細胞核あるいは細胞全体をそれぞれ10ミクロン角、50ミクロン角のX線で照射した。照射後60時間培養し、個々の細胞のコロニーあたりの細胞数から細胞の生死を判定し、細胞核平均吸収線量を用いて線量-生存率曲線を作成した。
[結果] 細胞核を照射した場合、細胞全体を照射した場合と比べ、低線量高感受性が明らかに増強されることをすでに昨年の本大会で報告した。バイスタンダー細胞死は、細胞全体を照射した場合には線量の増加と共に単調に減少し、その後線量と無関係に安定したが、細胞核を照射した場合には低線量域で一過的に増大し、その後線量の増加と共に回復し安定することが新たに明らかとなった。照射細胞の細胞死、バイスタンダー細胞死共に、細胞質へのエネルギー付与がない場合に、低線量域での致死の増大が起きることから、両者の誘導には共通のメカニズムが関与していると考えられる。細胞質へのエネルギー付与によって誘導される細胞内の反応が、低線量域において細胞の生存に重要な働きをすることが示唆された。
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© 2007 日本放射線影響学会
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