日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W9-4
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マイクロビームを用いた研究の多様性と将来への展開
原子力機構の生物照射用収束式重イオンマイクロビーム装置
*舟山 知夫坂下 哲哉及川 将一佐藤 隆博横田 裕一郎和田 成一神谷 富裕横田 渉小林 泰彦
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抄録
高LETの重イオンは、γ線などの低LET放射線と比較して大きな生物効果を示す。この重イオンの生物影響を明らかにすることは、重イオンのがん治療応用や、宇宙放射線の人体影響評価をおこなううえで極めて重要である。そこで、私たちは原子力機構・高崎量子応用研究所・TIARAのAVFサイクロトロンの垂直ビームラインにコリメーション方式のマイクロビーム装置を設置し、バイスタンダー効果研究などで一定の成果を挙げてきた。しかし、コリメーションによるマイクロビーム形成では、コリメーター周辺部での散乱イオンの割合がコリメーター径の微細化につれ増加すると同時に、コリメーターそのものの物理的加工の限界から形成できるビームサイズに限界がある。現在、マイクロビーム利用研究では、細胞や細胞膜そのものに加え、ミトコンドリアなどの細胞内小器官への放射線障害が細胞死に与える影響にも関心が高まっており、より径の小さいビームを形成することが求められている。そこで、私たちは磁気レンズによる収束式ビームを利用するマイクロビーム装置を従来のコリメーション式ビームとは異なる垂直ビームラインに新規に設置した。収束式ビームはサブミクロンのビームが形成可能でかつコリメーションによる散乱がない。加えて、ビームスキャナによるビームの高速なスキャンをおこなうことで、細胞への高速連続照射が実現可能になる。この収束式マイクロビーム装置をもちいて、私たちは直径1 μm以下の20Ne13+ (13.0 MeV/u, LET = 380 keV/μm)ビームを真空中で形成することに成功した。形成したビームを大気中に取り出し、CR39によるビームの分布を測定したところ、大気中でも、従来のマイクロビーム装置よりも微細な5 μm径以下のビームを得られることがわかった。講演では、現在構築中の細胞照射用ステーションの現状もあわせて報告する。
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© 2007 日本放射線影響学会
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