抄録
備讃瀬戸西部の閉鎖性が高く底質のシルト化が進んだ港湾域に全形のカキ殻を敷設し,敷設区における生物相の変化を調べた.敷設2ヶ月後から敷設区の生物は増加しはじめ,1年半後の生物の種類数は117種類,個体数は4,700 inds/m2,湿重量は487.3 g/m2となり,それぞれ対照区の2.2倍,2.3倍,13.2倍となった.敷設区全体で,生物によって無機化される炭素量は114.2 kgC/year/1,000 m2であった.敷設区のカキ殻は,敷設後2年を経過しても埋没することなく,表面が露出していた.カキ殻の敷設により,生物の多様性と現存量が増加するとともに,これらの生物によって流入してくる有機物が無機化され,敷設場所が維持されている可能性が示された.