抄録
複数の相同組換え修復関連蛋白変異体株において、相同組換えの頻度低下、放射線およびDNA阻害剤に対する高感受性、染色体異常などに加え、染色体数的異常が報告されている。染色体数的異常は、異数体形成と倍数体形成とに大別されるが、いずれも癌細胞における増加が報告されており、発癌およびその進展において重要な意味を持つことが想定される。我々は、ヒト大腸がん細胞株HCT116を用い、相同組換え修復に関与するRad51パラログの変異体を作成した。Rad51パラログはRad51B、 Rad51C、 Rad51D、 XRCC2、 XRCC3の5つのメンバーからなり、BCDX2およびCX3の2つの集合体を形成することが知られている。我々は、Rad51B+/-/-/-, Rad51C+/-/-/-およびXRCC3-/-ノックアウト細胞を作成し、その機能解析を行った。その結果、これらの3種類の変異体でみられる染色体数的異常には、変異株間における差が観察された。Rad51B+/-/-/-およびRad51C+/-/-/-では中心体断片化が見られ、異数体の増加が見られたのに対し、XRCC3-/-ではこれらは観察されず倍数体が増加していた。また、Rad51B+/-/-/-およびRad51C+/-/-/-では細胞周期チェックポイントの活性化による増殖速度の低下が見られたのに対して、XRCC3-/-ではその増殖速度は野生株と差がなかった。これらの結果に基づき、相同組換え修復関連蛋白変異体株における染色体数的異常のメカニズムについて議論する。