日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: BO-010
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突然変異と発癌の機構
放射線耐性細胞ではX線で誘発されるDNAの2本鎖切断は正確に修復される
*桑原 義和馬場 泰輔井上 和也栗原 愛福本 学
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抄録
[目的] 近年、がん治療において放射線療法が注目されている。ここで、放射線耐性細胞の出現は、放射線療法の予後を左右する重要な因子である。昨年、私たちは標準的な放射線療法に用いられる2Gy/dayのX線を照射し続けても死滅しない細胞株(HepG2-8960-R cells)の樹立を報告した。本研究では、親株であるHepG2細胞と放射線耐性細胞株であるHepG2-8960-R細胞を用いて、X線で誘発されるDNAの2本鎖切断(dsbs)修復を解析した。
[方法] ヒト肝がん由来のHepG2細胞株とその亜種であるHepG2-8960-R細胞株を用いた。X線誘発DNA dsbsの修復動態は、comet assay(中性法)を用いた。さらに、2Gy/day, 5日間のX線を照射して、小核形成とgamma-H2AXのフォーカス形成を比較した。
[結果] X線照射後、6時間以内におけるdsbsの修復動態をcomet assayを用いて調べた結果、HepG2におけるX線誘発DNAのdsbs修復動態は2相性を示した。しかし、HepG2-8960-Rにおいては、1相性であった。2Gy/dayのX線を照射後に形成される小核は、HepG2細胞では増加するものの、HepG2-8960-R細胞では、増加しなかった。この傾向は、2Gy/dayのX線を照射後に形成されるgamma-H2AXのフォーカス形成においても同様であった。
[考察] 放射線耐性細胞においては、より正確な修復機構である相同組み換え修復を主に使用していることが示唆されたが、このことを示すためには更なる研究が必要である。いずれにしても、小核形成やgamma-H2AXのフォーカス形成に関する実験から、放射線耐性細胞では、DNAの2本鎖切断の修復能が高いことが示唆された。また、小核やgamma-H2AXのフォーカスは、細胞の放射線感受性を予測するための指標になる可能性が示唆された。
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© 2007 日本放射線影響学会
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