日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: BP-228
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突然変異と発癌の機構
Minマウスにおける放射線発がん機構の解析
*岡本 美恵子
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抄録

生体分子や組織に対する放射線の作用について数多くの知見が集まってくるにつれて、放射線発がんのメカニズムについても少しずつその一端が明らかになりつつあるが、包括的な理解にはまだほど遠い。我々は、家族性大腸腺腫症(FAP)の疾患モデルマウスとして知られるMinマウスの系を改良することにより、比較的低線量で消化管に腫瘍を誘発することのできるコンソミックMinマウスの系を作出した。この系は、放射線誘発腫瘍と自然発生腫瘍の区別が可能であること、放射線による種々のセカンドヒットの解析が可能であること、腫瘍誘発効果が照射時のAgeに強く依存することなど、放射線発がんの分子機序を明らかにする上で多くの利点を持つ。この系を用いて、非照射、2週齢照射、7週齢照射個体に発生した小腸、大腸腫瘍におけるApc遺伝子セカンドヒットの種類、頻度、不活化のメカニズムについて解析した。その結果、自然発生と放射線誘発腫瘍でセカンドヒットスペクトルに差があること、小腸と大腸間では、自然発生と放射線誘発いずれにおいても、セカンドヒットの発生メカニズムが異なる可能性があることが強く示唆された。また、2週齢照射と7週齢照射群間では腫瘍発生頻度が大きく異なるにもかかわらず、セカンドヒットスペクトルにはそれ程大きな差が認められないこと、一方、自然発生腫瘍と7週齢照射群では腫瘍発生頻度には差が認められないにもかかわらず、セカンドヒットのスペクトルには差があることも明らかになった。このことは、放射線による腫瘍誘発効果と起始遺伝子であるApc遺伝子のセカンドヒットのパターンの間に単純な相関関係がみられないことを意味する。固形腫瘍におけるLOH解析の精度向上を目指して、R言語を用いて検出条件と解析パラメータの検討を行ったので、合わせて報告する。

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© 2007 日本放射線影響学会
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