日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: BP-229
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突然変異と発癌の機構
放射線誘発マウス胸腺リンパ腫細胞におけるPten遺伝子のDNAメチル化と遺伝子変化
*山口 悠柿沼 志津子甘崎 佳子西村 まゆみ野川 宏幸島田 義也
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抄録
【目的】ヒトやマウスの発がんにおいて、PTENの不活性化が多数報告されている。その不活性化の機構として、ヒトではPTENのプロモーター領域のメチル化(非小細胞肺がん)や、DNA変異(子宮内膜種、グリオブラストーマおよびCowden病)が報告されている。しかし、マウスでは放射線誘発胸腺リンパ腫において、Ptenのメチル化の関与を示唆する報告があるものの未だ明らかになっておらず、DNA変異に関する報告も少ない。そこで本研究では、放射線誘発マウス胸腺リンパ腫におけるPtenのメチル化とDNA変異を解析し、Ptenの不活性化におけるそれぞれの役割を解析することを目的とした。
【材料と方法】B6C3F1マウスにX線2.0Gyを一週間隔で4回照射して誘発したマウス胸腺リンパ腫(23サンプル)を用いた。先ず、マイクロサテライトマーカーを用いたヘテロ接合性の消失(LOH)解析を行った。次に、RT-PCR法による遺伝子発現と、Bisulfiteシークエンシング法によりメチル化の分布を解析した。
【結果と考察】Ptenは、マウスの19番染色体のセントロメアから24.5cMにマップされている。この領域でのLOHが高頻度に検出された(6/23, 26%)。Ptenの遺伝子発現は、高頻度に低下(12/23, 52%)し、消失(1/23, 4%)も見られた。そこで、メチル化の分布を解析した結果、エクソン1の非翻訳領域とその5’上流領域における53個のCpG部位ではメチル化の異常は認められなかった。従って胸腺リンパ腫のPtenの発現低下にメチル化は関与しないことが示唆された。また、発現解析で認められたPtenのスプライシング異常(1/23, 4%)は、塩基配列の解析によりイントロン1の一部の挿入とエクソン2の欠失であった。さらに、残りの胸腺リンパ腫(22 サンプル)について、Ptenの塩基配列の解析とタンパク質の発現解析により遺伝子変異の探索をしている。
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© 2007 日本放射線影響学会
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