日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: DP-123
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DNA損傷の認識と修復機構
間期HeLa細胞におけるDSB誘発刺激後の減弱したH2AXリン酸化
*高城 啓一畑下 昌範福田 茂一久米 恭
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抄録
 DNA二本鎖切断(DSB)部位の周囲にあるH2AXは、セリン139の位置でリン酸化を受け、γ-H2AXフォーカスを形成する。そのためγ-H2AXは、核内におけるDSB部位の指標と見なされている。しかし、H2AXのリン酸化メカニズムには、いまだ明らかにされていない点が多く存在する。
 本研究では、我々は3種の細胞株(HeLa、DU145、およびBALB-3T3)における、幾つかのDSB誘起刺激後のγ-H2AXフォーカス形成を比較した。プロトンビーム(0.5 – 1.0 Gy)照射や、温熱処理(44℃、10分)後、DU145、および、BALB-3T3では非常に明確なγ-H2AXフォーカスが形成されたが、我々の研究室で維持されているHeLa細胞では、間期において、これらの刺激後にかすかなフォーカスしか形成されなかった。分裂期の染色体ではプロトンビーム照射後に明確なγ-H2AXフォーカスが形成されることから、HeLaのH2AXがリン酸化を受ける能力を失っている可能性は低い。さらに、ヒドロキシ尿酸の投与によりDNA複製を停止させた場合、HeLaにおいても、他の細胞株と同様に、核全域に及ぶ強いH2AXリン酸化が観察された。
 これらの結果は、H2AXのリン酸化に少なくとも2つのメカニズムが関与し、間期においてDSB形成に反応する主要な経路は、HeLa細胞では失われているか、減退していることを示唆している。DSBの検知や修復に関与する他の因子とH2AXとの関係についても検討を試みた。
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© 2007 日本放射線影響学会
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