抄録
【目的】従来、鉱石からの222Rn散逸率の測定は、鉱石を密閉容器に入れ、気相中の222Rnから放出されるα線を測定することにより行われてきた。この方法は、散逸222Rnそのものを測るため、散逸率の低い試料でも比較的精度良く測ることができるが、専用の222Rn測定器とその正確な校正が必要である。一方、未校正のNaI(Tl)シンチレーション検出器によるγ線測定を2回行うことで、簡便に222Rn散逸率を測定する方法が考案された。しかし、試料にTh系列核種が含まれる場合には220Rnの影響を受ける可能性があった。そこで、本研究では、220Rnの影響を完全に除去し、γ線スペクトロメトリによる222Rn散逸率の測定を行った。また、測定値の比較としてα線測定による222Rn散逸率も求め、当該測定法の結果の評価も行った。【方法】試料として、岡山大学病院三朝医療センター・高濃度ラドン熱気浴室の源泉泥(0.9±0.0 Bq/g)、およびオーストリアのバドガスタインで採取した鉱石(6.4±0.1 Bq/g)を用意した。222Rn散逸率の測定手順は次の通りである。(1)γ線測定:乾燥試料を共栓ガラス瓶に入れ密栓し約30日間静置した後、高純度ゲルマニウム検出器によるγ線測定を行った。その後、瓶の栓を開け222Rnを外へ逃がし、再びγ線測定を行った。2回測定における214Pbあるいは214Biから放出されたγ線のカウント比を取ることで、220Rnの影響を受けることなく222Rn散逸率を算出した。(2)α線測定:乾燥試料と電離箱型ラドン測定器をデシケータに入れ、その中の222Rn濃度を約2週間測定し、得られた222Rn成長曲線から散逸率を算出した。【結果と考察】α線測定より求めた222Rn散逸率は、三朝源泉泥が30%、バドガスタインの鉱石が2%であった。γ線測定より求めた222Rn散逸率とα線測定により求めたそれとの比較結果や、試料の222Rn散逸率に関する検出限界については本大会で発表する。