抄録
【目的】我々は前回、マウスに低線量X線を事前照射した場合、虚血-再灌流障害である浮腫が形態学的に抑制したことを報告した。今回は、本抑制効果についてマウスの足骨格筋の細胞間隙の大きさを病理学的に観察することなどにより検討した。【方法】7週齢・BALB/cマウスへshamまたは0.5GyのX線を全身照射し4時間後に、常法に従い輪ゴムを足に10回巻き虚血させた。虚血時間は0.5、1、または2時間とし、再灌流0.5、1、2、3、または24時間後に浮腫の程度をそれぞれ測定した。次に、浮腫に伴い増大する足骨格筋の細胞間隙を検討するため、hematoxylin-eosin (HE) 染色を行った。さらに、血清中SOD活性の測定をした。【結果】1) 浮腫は、虚血が0.5または1時間の場合、0.5Gy照射により抑制され障害の回復もshamに比べ早かった。2) 足骨格筋の細胞間隙は、虚血が0.5または1時間の場合、0.5Gy事前照射によりshamに比べ有意に減少し無処置に近づいた。また、 筋細胞間隙は、虚血が1時間で再灌流0.5、2、24時間後において、0.5Gy事前照射によりshamに比べ有意に減少し無処置に近づいた。3)虚血(1時間)-再灌流(1時間)後の血清中SOD活性は、0.5Gy照射した方が有意に高かった。【考察】0.5Gy照射により足骨格筋の細胞間隙が有意に増大したことから、低線量の事前照射は虚血-再灌流障害を抑制することが病理学的観察からも示唆できた。これは0.5Gy照射によりSOD活性が有意に増加したことから、虚血-再灌流障害の抑制効果は抗酸化機能の亢進が一因していることも示唆できた。本報告では、虚血-再灌流障害の病理学的観察としてperiodic acid methenamine silver (PAM)染色による毛細血管の変化結果などについても言及する。