日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W1R-317
会議情報

放射線発がんの”非標的仮説”について
Msh2欠損マウスにおける酸化ストレス誘発消化管発癌
*朴 晶淑磯田 拓郎松尾 知子中津 可道中別府 雄作續 輝久
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
活性酸素は生体内での通常の代謝活動によって常に生じており、また環境中に存在する電離放射線や化学物質等によって生体内で生成される。細胞内で生じた活性酸素はDNAやその前駆体を攻撃し、ゲノムに様々な酸化的DNA損傷を与える。これらの傷は突然変異を引き起こし発癌の原因となる。DNA修復機構の中で、ミスマッチ修復系は複製エラーばかりでなくある種のDNA損傷を認識し排除することでゲノム安定性に寄与していることが知られている。近年、ミスマッチ修復系が酸化的DNA損傷による突然変異抑制に関与していることを示唆する実験結果が得られている。最近、我々は酸化ストレスを負荷することによりマウスの消化管に腫瘍を誘発する実験系を樹立した。酸化ストレスによる消化管癌発生の抑制におけるミスマッチ修復系の働きを調べるために、今回我々はMsh2欠損マウスを用いてKBrO3誘発発癌実験をおこなった。KBrO3を投与されたMsh2欠損マウスの小腸では腫瘍形成頻度が野生型に比べて劇的に高くなっていた。これらの結果は、ミスマッチ修復系が酸化ストレスによるマウス小腸腫瘍形成を抑制することを示している。この腫瘍形成のメカニズムを探るために、腫瘍関連遺伝子としてctnnb1 (β-catenin), k-rasおよびTrp53等の遺伝子における突然変異を解析したので、これらの結果も合わせて報告する。
著者関連情報
© 2007 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top