日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W7R-378
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植物のDNA修復系からみた放射線生物影響
光動力学療法および音響化学療法における細胞致死効果の比較-ローダミン誘導体を用いた検討-
平岡 和佳子*近藤 隆
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抄録
 超音波を用いた治療への応用性が注目されている。その代表的なものが、音響化学療法(Sonodynamic therapy)である。本研究では、ローダミン誘導体での光照射と超音波照射の効果を化学的および生物学的効果について比較検討し、そのメカニズムを明らかにすることを試みた。
 光と超音波の照射の実験では、まず可視光源として赤外光をカットしたXeランプ、超音波として1.2 MHzの連続波を照射し、そこで発生する活性酸素や有機ラジカルをESR-スピントラッピング法で検出・定量し、さらに、生物学的影響として、細胞増殖能と細胞のViabilityを計測した。
 色素溶液への光照射によって発生する活性酸素をニトロキシド(TAN)生成を指標にESRで検出した。ローダミン6Gに光を照射するとTANが検出され、この系に一重項酸素のスカベンジャーであるトリプトファンやNaN3を加えると、シグナルが消失することから、一重項酸素の発生が示された。すべての色素について発生するTANを定量したところ、ローダミンTAN、スルフォローダミン、ヘマトポルフィリンの順に大きいことが示された。ヒトリンパ球細胞であるU937細胞に各色素を取り込ませ、可視光を照射し、二日後の細胞増殖能を調べた。各色素を 10 μMの濃度で取り込ませた例では、ローダミン6G、ヘマトポルフィリンで大きい細胞増殖抑制効果が認められた。以上の光照射等の結果から、光照射による細胞増殖抑制効果の違いは、細胞内での一重項酸素の発生量に依存することが示された。 次に、超音波による薬物の活性化の検討を試みた。色素溶液に1.2 MHz超音波を照射すると、水単独の場合に比べて、わずかに多いTANの発生を示したが、色素間では、有意な違いを認めることはできなかった。スピントラップ剤として、DBNBSを用いて超音波を照射したところ、エリスロシン、ローズベンガル、スルフォローダミンにおいて、強い有機ラジカルのシグナルが観察されたが、ローダミン123と6Gではその発生量は実際には微量であった。実験に用いた超音波強度では、超音波単独でも、照射直後に細胞膜の損傷が認められる。実験では照射後の生存率を、色素排除能を指標として、評価した。10 μMの色素を取り込んだ細胞では、ローダミン6G、123、サルフォローダミンで増強効果が大きいことが判明した。
 以上の超音波の実験をまとめると、活性酸素の発生量には違いが見られないことと、色素由来の有機ラジカルの発生量、色素の細胞内への保持性、増強効果、これらに一貫性が見られないことから、超音波による細胞致死増強効果は、細胞内でのラジカル発生では説明することが難しい。即ち、Sonodynamic 効果のメカニズムは、活性酸素や色素ラジカルの関与によるものではなく、励起色素のキャビテーションへの影響等を考慮する必要がある。
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© 2007 日本放射線影響学会
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