日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: W2-3
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環境放射能研究とretrospective dosimetryの展開
環境ウラン研究の新展開を目指して
―U-236グローバルフォールアウトと広島原爆黒い雨―
*坂口 綾川合 健太Peter Steier富田 純平星 正治山本 政儀
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キーワード: U-236, 表層土壌, 黒い雨
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抄録
<はじめに> 近年、U-236は環境中の燃焼U汚染を特定できる有用な指標として利用されはじめている。このような中、核実験によるグローバルフォールアウトU-236の存在が示唆された。本研究では、地殻表層土壌中のグローバルフォールアウトU-236を他の代表的なフォールアウト核種(Cs-137, 239+240Pu)と併せて評価する。さらに環境中U-236測定の応用研究として広島原爆黒い雨の地域特定を試みる。
<方法>2008年8月石川県能美市にて、直径4.8 cm深度10-30 cmの円筒土壌コア試料を併せて12本採取した。試料を風乾後、粉砕・均一化しGe半導体検出器によるγ線測定で137Csを定量した。それら土壌を硝酸で煮沸抽出し、U、Puをそれぞれ精製後αスペクトロメトリー、ICP-SF-MSおよび加速器質量分析にて238U濃度、236U/238U原子比、239Pu、240Pu濃度を定量した。
<結果> 土壌中236U/238U原子比および236U濃度範囲はそれぞれ1.85×10-8 - 1.09×10-7、8.92×108 - 3.76×109 (atoms/g)であった。これはインベントリーで4.72×1012 - 1.39×1013 (atoms/m2)に相当する。236U深度分布は239+240Puとよい相関を示し 236U/239+240Pu比は (1.56±0.10)×1011 (atoms/Bq)であった。これら測定結果と全グローバルフォールアウト239+240Pu (14PBq)から、グローバルフォールアウトとして全世界にばらまかれた 236Uは約900 kgと見積もられた。 このように、低い濃度の表層土壌中U-236測定から核施設などによる燃焼U汚染を評価する際には、グローバルフォールアウトU-236の影響も考慮することが重要であると示唆された。
現在、広島市内表層土壌試料の分析・解析を行い、137Cs、236U、239+240Puの同位体組成から黒い雨の地域特定を試みている。発表ではその結果について報告する。
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© 2009 日本放射線影響学会
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