抄録
HIF-1抑制剤が放射線治療の効果を増感することが報告されている。その一方で、HIF-1活性の阻害は腫瘍血管密度の減少を引き起こし、結果として放射線抵抗性の低酸素分画を増大させると考えられることから、HIF-1抑制剤に単純に期待を寄せるのは甚だ軽率であると考えられる。本研究では、HIF-1抑制剤(YC-1)と放射線の単独および併用治療後に移植腫瘍内のHIF-1活性をイメージングし、併用プロトコールを最適化することを試みた。γ線照射(5Gy)の6時間後、低酸素分画の再酸素化によりHIF-1活性がVHL依存的に減少した。その18時間後(γ線照射24時間後)にはHIF-1αタンパク質がPI3K/Akt/mTOR依存的に発現し、腫瘍内のHIF-1活性が亢進に転じた。このHIF-1の活性化をYC-1によって抑制した場合に、放射線単独治療と比較して有意な増殖抑制効果が認められた。一方、YC-1の投与後、腫瘍内HIF-1活性の低下によって腫瘍血管密度が減少し、結果として腫瘍内低酸素分画が増加した。このタイミングで放射線を照射した場合、放射線単独治療と比較して治療効果が減少した。これらの結果は、HIF-1抑制剤は投与するタイミングによって放射線治療効果を増感することもあれば阻害することもあり、最適な治療効果を得るためには、放射線照射によるHIF-1の活性化を抑制することが重要であることを示している。