日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: OA-1-6
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A DNA損傷・修復
低酸素下がん細胞におけるDNA損傷応答抑制機構
*谷本 圭司中村 秀明河本 健加藤 幸夫檜山 英三西山 正彦檜山 桂子
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キーワード: 低酸素, 転写制御, DNA修復
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抄録
低酸素下がん細胞がDNA損傷を引き起こす放射線治療や抗がん剤治療に抵抗性を示すことは広く知られている。最近,低酸素ストレス刺激により,ある種のDNA修復遺伝子発現が低下することが示唆されているが,放射線や抗がん剤による DNA損傷応答に与える影響には不明な点がある。我々は,低酸素環境下におけるDNA修復遺伝子群の発現変動,およびDNA損傷応答について,低酸素応答性転写因子HIF-1およびその標的遺伝子で転写抑制因子であるDEC機能に注目して検討しているので報告する。 網羅的遺伝子発現解析により,24時間低酸素刺激により通常酸素分圧下の2/3以下に発現低下した22のDNA修復遺伝子のうち,BRCA1,RAD51,MBD4,MRE11A,MLH1,MSH2の低酸素下での転写調節機構を解析した。その結果,HIF-1下流のDECは全てのプロモーター活性を抑制し,そのプロモーター抑制機構は幾つかの様式が存在することが明らかとなった。さらに,γH2AXを指標に放射線による損傷応答を観察すると,低酸素前処理はDNA修復を遅らせることが明らかとなった。一方,低酸素前処理や低酸素下におけるDNA損傷薬の感受性は多くの細胞で低下するが,その低下の様式は一様ではないため,現在,その詳細な機構についての検討を行っている。
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© 2010 日本放射線影響学会
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