日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: OA-2-3
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A DNA損傷・修復
Rad18ノックアウトマウスの自然発癌の形成
*立石 智江藤 瑞菜
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抄録
紫外線照射、アルキル化剤処理などにより傷害を受けたDNAは、種々の修復システムにより修復される。しかし、DNAの傷害の修復には24時間前後の長い時間を要する種類のものがあり、かならずしも効率的なシステムではない。DNAが傷害されている環境でも細胞増殖を保ち生命を維持するため、DNA傷害が残存しているDNA鎖も複製させるための機構が存在する。これが損傷寛容(DNA damage tolerance)である。Rad18は、PCNAをモノユビキチン化することにより、損傷乗越え複製酵素η等を制御し、損傷寛容で重要な役割を果たしている。我々はRad18欠損マウスを作成し、その自然発癌頻度を解析した。その結果、1.5年齢で野生型マウスに比べて約2倍高い発癌頻度であった。また、野生型マウスではみられないadenoma、carcinomaなどがみられ、発癌がみられる臓器も多岐にわたっていた。紫外線照射による皮膚癌頻度は野生型マウスに対して差がみられなかった。次に、細胞の癌化とRad18発現量との関係を調べた。ヒト形質転換細胞株または癌患者由来の細胞株でのRad18mRNA量は、ヒト初期細胞に比べて3倍から30倍に増加していた。Rad18タンパク量に関しても、同様に増加していた。現在、ヒト癌患者由来の組織でRad18の発現が亢進しているか調べている。
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© 2010 日本放射線影響学会
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