日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: PA-3
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A DNA損傷・修復
高エネルギー陽子線のlineal energy値と微視的DNA損傷定量化による物理・生物学的評価システム
*洪 正善GERELCHULUUN Ariungerel加瀬 優紀盛武 敬栄  武二安西 和紀櫻井 英幸坪井 康次
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抄録
【目的】 高エネルギー陽子線のplateau部分(P点)とBragg peak近傍(B点)ではLineal energy(y*)値が異なり、生物学的効果も異なる。そこで本研究では、155MeV陽子線の異なる2点でy*値を測定し、それに対応するDNA塩基損傷とDNA二本鎖切断(DDSB)を定量的に明らかにすることで、陽子線治療における物理・生物学的評価システム構築の基礎的研究を行った。 【対象、方法】 155MeVの陽子線の7.2mm(P)と132mm(B)の深度でy*値(keV/micron)を測定した。同じ部位でDNA溶液と培養腫瘍細胞MOLT-4を照射し、塩基損傷はDNAに生じる8-Hydroxydeoxyguanosine (8-OHdG)の生成量を定量化した。DDSBは照射後のDNAを電気泳動しそのパターンの変化を画像処理にて定量化した。また、MOLT-4ではDDSBを示すgamma-H2AXフォーカスを免疫蛍光染色法により可視化し、画像解析にてその数を定量化した。さらに、ラジカル消去剤3-methyl-1-phenyl-2-pyrazolin-5-one (エダラボン)を添加した状態で同様の検討を行った。 【結果】 吸収線量を同じにした場合、照射後の8-OHdGの産生は、P点>B点で、エダラボンの8-OHdG産生抑制効果もP点>B点であった。陽子線照射後のgamma-H2AXフォーカスの数はP点とB 点では有意な差はなかったが、エダラボン添加後にはP点のほうが少なくなる傾向が認められた、電気泳動ではP点よりもB点の方がDDSBを多く生じる傾向が認められた。 【結論と考察】 陽子線治療の標準化には陽子線のマイクロドシメトリと、それに基づく信頼性の高い生物学的エンドポイントからなる物理・生物学的効果評価システムを確立することが望まれる。今回の結果からy*値の測定と微視的なDNA損傷の結果を融合した物理・生物学的評価システムのか構築が可能であることが示唆された。
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© 2010 日本放射線影響学会
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