抄録
【目的】DNA鎖間架橋剤塩酸ニムスチン(ACNU)およびメチル化剤テモゾロミド(TMZ)は脳腫瘍(グリオーマ)化学療法に使用されるアルキル化剤である。しかし、これらの治療効果は薬剤抵抗性の獲得のために限界があり、薬剤抵抗性には多くのDNA修復経路が関与することが示唆されてきた。我々は、Fanconi anemia (FA) 修復経路の因子FANCA、C、D1、D2、Gの中でFANCD1がACNUおよびTMZの増感の標的候補であることを発見した。FANCD1はBRCA2と同一であり、相同組換え(HR)修復の最初にはたらく因子でもある。そこで、ACNUおよびTMZ処理後HR修復経路によって修復されるかどうかを明らかにすることを目的とした。
【方法】HR修復頻度はCHO細胞SPD8を用いて、Helleday ら(1998) のreversion assayによって薬剤ごとに調べた。
【結果】ACNUの10 μM、30 μM処理ではHRで修復された頻度はACNU非処理に比べて7.2倍、13.9倍であった。TMZの100 μM、300 μM処理におけるHR修復頻度はTMZ非処理に比べて8.4倍、22.8倍であった。
【総括】ACNUおよびTMZによってHR修復経路が誘導されることが明らかになった。HR修復経路(特にFANCD1/BRCA2)がアルキル化剤の標的になることが示唆されるので、今後、脳腫瘍組織中のFANCD1のタンパク質およびmRNAの発現量を調べ、ACNUまたはTMZの治療結果との相関関係を明らかにしたい。