日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: S4-2
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シンポジウム4 DNA損傷応答とゲノム高次構造
誤ったDNA二重鎖切断再結合部位に対するATM依存的チェックポイント応答
*山内 基弘鈴木 啓司山下 俊一
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抄録
これまでの研究から、ATM蛋白質はDNA二重鎖切断のみならず、DNA二重鎖切断を伴わないクロマチン高次構造変化によっても活性化することが明らかとなっている。そこで本研究では「異なる染色体間で誤ったDNA二重鎖切断修復が行われた際には、DNA二重鎖切断によって崩壊したクロマチン高次構造が正常に回復しない場合があり、その場合にはDNA二重鎖切断再結合後もATM活性化が持続する」という仮説を立て、その検証を行った。ATM依存的な分子応答としてSer139リン酸化ヒストンH2AXフォーカスを、ガンマ線照射したG0/G1同調細胞の同調解除後の第一分裂期染色体上で観察した結果、フォーカスは二動原体・三動原体染色体、あるいは一見無傷の染色体など、すでにDNA二重鎖切断再結合が終了してから長時間(少なくとも15~19時間以上)経過している染色体の内部においても持続的に形成されていることが分かった。またATM阻害により2 Gyガンマ線照射後の第一分裂期における染色体転座の頻度は約5倍上昇し、p53 siRNA処理によっても同様に上昇したことから、ATMによる転座頻度の抑制は主にp53依存的なチェックポイントによるものであると考えられた。さらにATM阻害剤存在下で2 Gy照射後、第二分裂期までATM阻害剤を処理し続けた群と第一分裂期までATM阻害剤を処理し、その後第二分裂期までは阻害剤除去によりATM活性を回復させた群とで第二分裂期における転座頻度を比較した結果、後者で転座頻度が減少することが分かった。以上の結果から、DNA二重鎖切断修復が完了後もそれが異なる染色体間の誤った修復である場合、ATM依存的なチェックポイント応答が持続し、その持続的応答により染色体転座が次世代に受け継がれるのを最小限に抑えていることが示唆された。
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© 2010 日本放射線影響学会
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