日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: PE-19
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E 放射線治療・修飾
オルトバナジン酸ナトリウム(バナデート)は、マウスにおいて全身照射後の障害に対して有効な緩和剤(Mitigator)である
*王 冰田中 薫森田 明典尚 奕VARES Guillaume森本 泰子藤田 和子根井 充
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抄録
オルトバナジン酸ナトリウム(Na3VO4、バナデート)は、バナジウムの無機化合物であり、転写依存性と転写非依存性両経路による放射線誘発p53を介したアポトーシスを効果的に抑制する。マウスに全身照射を行なう前に20 mg/kgのバナデートを腹腔内投与すると、有効な放射線防護剤として働き、造血死を完全に防ぎ、部分的に腸死を防護する。今回我々は、マウスに全身照射を行なった後にバナデート投与することによって、放射線緩和効果について調べた。その結果、20 mg/kgの量のバナデートを1回投与しただけでも30日生存率や、生き残ったマウスの骨髄形成不全、末梢血の血液像、そして骨髄中にある赤血球の微小核形成に、明らかな改善が見られた。40 mg/kgの量のバナデートを1回投与した場合、あるいは、20 mg/kgを 1回投与した後、1日当たり5 mg/kgの量のバナデートを4日間連続投与した場合、有効性は更に有意に向上した。マウスに全身照射した15分後、40 mg/kgの量のバナデートを1回投与した時のdose reduction factor (線量減少率)は、1.3であった。これらのことは、バナデートが、マウスにおいて、全身照射によって誘発された造血障害に対する有効な防護剤であるだけでなく、強力な緩和剤でもあることを示している。
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© 2010 日本放射線影響学会
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