日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: PE-20
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E 放射線治療・修飾
放射線治療で誘導される癌特異的キラーT細胞のがん治療への利用
*武島 嗣英脇田 大功大栗 敬幸白土 博樹北村 秀光西村 孝司
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抄録
これまでの放射線治療による腫瘍縮小のメカニズムはDNAへの傷害付与による癌細胞のアポトーシスに起因すると考えられてきたが、我々は最近、放射線治療により高頻度に癌特異的キラーT細胞が所属リンパ節と腫瘍内に誘導され、これが放射線治療の腫瘍縮小効果に大いに寄与することを発見した。さらに所属リンパ節における放射線治療由来癌特異的CTLをex vivoで増殖し、担癌マウスに移入することで癌を治癒することに成功したのでここに報告する。C57BL/6マウスに2x106個のEG7(OVA gene-taransfected EL-4)を脚部に皮内接種して腫瘍の大きさが8mm程度になったところで腫瘍塊にX線を2Gy照射した。照射5日後に所属リンパ節内と腫瘍内リンパ球の癌特異的キラーT細胞(CD8+OVA-tetramer+細胞)の割合が高頻度に出現していることを確認した。次に照射により所属リンパ節で出現したOVA-tetramer+ CTLをex vivoで増殖させてこれを担癌マウスに移入しての腫瘍の治療ができるかを試みた。照射5日後に所属リンパ節細胞を採取しCD8+OVA-tetramer+細胞をセルソーターにて分取しこれをIL-2、IL-12、IFN-γ存在下にて培養したところ、培養7日目には細胞数が約5倍に増加した。このCD8+OVA-tetramer+細胞をEG7担癌マウスに移入したところ、強い腫瘍増殖抑制がみられ完全治癒するマウスが現れた。現在、移入するCD8+OVA-tetramer+細胞を減らし、他の免疫治療(Th1細胞療法)との併用で腫瘍を治癒させることができるか確認しているところである。これらの結果は臨床における放射線治療と免疫治療の新規併用治療法の開発につながると考えている。
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© 2010 日本放射線影響学会
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