抄録
沖縄人捕虜としてハワイへ移送された「ハワイ捕虜」の語りからは,ハワイと沖縄の収容所における歌の創作と芝居の上演が確認できる。しかしハワイの捕虜収容所でみられた沖縄文化は,沖縄の民間人収容所のなかの文化復興という文脈の影に見過ごされてきた。沖縄戦の体験を語る楽曲のなかのポピュラーなものの影や,「戦後に復興した沖縄芝居」との認識が,「ハワイ捕虜」の文化活動を十分検討させてこなかったからである。ハワイと沖縄の間を結ぶ捕虜体験を詠み込んだ歌,ハワイの捕虜収容所において継承されていた沖縄芝居の事例から,ハワイの戦争捕虜収容所のなかの文化活動は戦前の沖縄文化の継承だけでなく,新たに創作されたものでもあったとみることができる。