主催: 人工知能学会
会議名: 第95回 言語・音声理解と対話処理研究会
回次: 95
開催地: オンライン
開催日: 2022/09/15 - 2022/09/16
p. 14-19
本発表では,会話において「ありがとうは?」のように,相手が感謝表現を産出していないことを指摘したり,相手に感謝表現を産出するよう促したりする現象に注目する.従来の研究では,おもに親子の会話における上述の現象が注目され,社会的に未熟な子どもを社会化するためのストラテジーであるという指摘がなされてきた.しかし,大人から見れば子どものやり方は未熟に見えるものの,子どもの視点に立てば,そこには子どもなりの規範があると考えられる.そこで本発表では,感謝表現の不在が見える側と見えない側,それぞれのふるまいを会話分析の視点から記述し,この現象が組織化されるプロセスの解明を試みる.発表では,その結果として,どちらの視点においても相互行為上合理的な理由があること,それゆえに感謝表現を促すことができるのは,ごく限られた状況であることを示し,相互行為による活動の中で感謝表現を使用することの意味について考察する.