人工知能学会研究会資料 言語・音声理解と対話処理研究会
Online ISSN : 2436-4576
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95回 (2022/9)
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 初田 玲音, 荒木 雅弘
    原稿種別: 研究会資料
    p. 01-07
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
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    雑談対話の性能を高めるにあたり,現在の雑談対話システムの研究においては次の2点が課題として挙げられる.1点目は,対話におけるシステムのエラーを共同で分析し,知見を共有することが難しい点である.2点目は,システム間の一貫した評価が難しいことである.これを受けて,対話システムの対話ログのみを対象としたエラー分析である対話破綻の類型化が提案され,任意の対話システムの問題点の議論や一貫した性能比較を可能にした.しかし,現時点でエラー分析は人手で行われており,任意の対話システムに対して評価することは難しい.そこで我々は,対話ログから,類型化案に基づく8グループを識別するシステムを提案した.実験では,提案システムと,類型情報を考慮した対話破綻検出を破綻類型識別へ拡張したベースラインとの比較を行った.その結果,エラー頻度が高い3グループについて,全てのF値がベースラインを上回る精度を達成した.

  • 河原 清志
    原稿種別: 研究会資料
    p. 08-13
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
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    本発表は、がんの闘病に関する書籍のテキストを素材にした読書会の会話録から、参加者がどのように感情表出しつつ共感を形成してその場のラポールを高め、相互にケアを行ったかについての検証を目的とする。具体的には読書会に際し、参加者にはその場で抱いている思いを自由に語っていただいた。テキストの特定の一節を指定し、それについてどう思うか、どう感じるかを、ご自身の人生経験を踏まえて自由に意見を述べ合う形で進めた。感情の対象として、書籍や筆者に対する感情、テーマに対する感情、自身の経験を語る際の感情、自分自身に対する感情、他者が語った経験に対する感情などが観察された。そしてこれらが福田(2008)による感情の4層モデル(原始情動、基本情動、社会的感情、知的感情)のどれに該当するかを同定しつつ、どのように相互に共感が形成されていったかを論じる。福田正治「感情の階層性と脳の進化」(『感情心理学研究』16-1)

  • 岸本 健太
    原稿種別: 研究会資料
    p. 14-19
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
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    本発表では,会話において「ありがとうは?」のように,相手が感謝表現を産出していないことを指摘したり,相手に感謝表現を産出するよう促したりする現象に注目する.従来の研究では,おもに親子の会話における上述の現象が注目され,社会的に未熟な子どもを社会化するためのストラテジーであるという指摘がなされてきた.しかし,大人から見れば子どものやり方は未熟に見えるものの,子どもの視点に立てば,そこには子どもなりの規範があると考えられる.そこで本発表では,感謝表現の不在が見える側と見えない側,それぞれのふるまいを会話分析の視点から記述し,この現象が組織化されるプロセスの解明を試みる.発表では,その結果として,どちらの視点においても相互行為上合理的な理由があること,それゆえに感謝表現を促すことができるのは,ごく限られた状況であることを示し,相互行為による活動の中で感謝表現を使用することの意味について考察する.

  • 橋本 樹, 榎本 美香
    原稿種別: 研究会資料
    p. 20-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
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    多人数インタラクションにおいては、参与者たちはつねに一つの会話に参加しているわけではなく、いくつかのグループに分かれたり、違うグループに移動したりしている。これを参与者の再編成と呼ぶ。本研究では、参与者たちが行っている再編成の過程を明らかにする。6人でピザを作っている場面(34分9秒)を分析対象とし、参与者たちのグループが分裂したり統合する事例を通じて、参与者達がおこなっている再編成のあり方を見出す。分裂は、1)トピックの終了などで参与者再編成が可能なタイミングが生じ、2)ここで分裂を誘発する行動(宛先を限定する発話など)がなされ、一部の参与者だけで会話が始まり、3)別の話題を誘発する行動(目配せなど)から、残された参与者たちの会話が始まることで生じる。統合は1)2)により生じる。このインタラクションの組織化のあり方を参与者再編成システムとして提案する。

  • 中野 真弓, 榎本 美香
    原稿種別: 研究会資料
    p. 26-31
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
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    複数人で調理などの作業を行う際には、調理を達成するための活動とそれ以外の活動など複数のアクティビティが発生する。本研究では、それら個々の活動がどのように開始・終了されていくのかを明らかにする。6人でピザを作る場面(34分9秒)を分析資料とし、活動の変遷パターンを分析する。その結果、1)終結(前の活動が終結し次の活動に移行する)、2)中断(いったん活動を中断し次の活動を挟んだ後に前の活動を再開する)、3)中止(前の活動を中止し次の活動に移行する)という3つのパターンがあることが分かった。いずれの活動の変遷も、参与者の注意の焦点の変更が発話や身体動作によって示されることがきっかけとなる。なお活動を再開するか中止するかは、それぞれの活動の優先順位に依存している。

  • 李 思侠, 岡田 将吾
    原稿種別: 研究会資料
    p. 32-37
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    会議録・要旨集 フリー

    タスク指向対話システムにおける新領域の未見スロットに対処するため、ゼロショットスロットフィンリングが提案された。先行研究では、ゼロショットスロットフィリングを一定の精度で改善したが、ゼロショットスロットフィリングが対話システム全体に与える影響については検討されていない。本研究では、未知の領域に遭遇した際に、ゼロショットスロットフィリングの改善が対話システム全体にどのような利益をもたらすかを調査した。そのため、従来手法に基づくモジュールとゼロショット手法に基づく2つのモジュールを含む異なるスロットフィリングモジュールを用い、他のモジュールは固定したまま、対話システムを比較した。実験の結果、ゼロショット法に基づくモジュールを用いることで、スロットF1スコアが平均15.01%向上し、広く用いられている4つの対話評価指標において平均6.8%の向上で対話システムが強化されることが示された。

  • 佐藤 真, 高木 友博
    原稿種別: 研究会資料
    p. 38-43
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
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    価格交渉対話は,対話行為や言葉を選ぶかという離散行動と,提案する価格の決定という連続行動を同時に扱う必要がある.先行研究により,言語的なコミュニケーション能力と価格提案戦略をハイブリット強化学習で同時に学習する手法が提案されているが,独自のシュミレータによって実現性が示されたのみであり,現実に即した価格交渉対話への適用は未着手である.我々は,実在の商品に対する人間同士の交渉対話から作成されたCRAIGSLISTBARGAIN datasetに対し,教師あり学習とHybrid Actor-Criticを用いたマルチエージェント強化学習の併用によって,シュミレータを用いずに学習を行った.教師あり学習のみを用いたエージェントとの交渉によって価格提案戦略を,各対話行為の使用割合比較によって人らしさを機械的に評価し,提案方式の有効性を確認した.

  • 岩橋 直人, 船越 孝太郎
    原稿種別: 研究会資料
    p. 44-46
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    会議録・要旨集 フリー

    対話は、それ自体が言語的な協力であると同時に、一般に主目的とする非言語的な協力を量的質的に向上させるためのインタラクションである。したがって、対話研究は、協力の認知の探求、および人間と協力する人工知能の開発の二つを目的とすることができる。本報告では、発表者らが開発したソフトウエアRoCoCoを紹介し、これを利用した対話研究の可能性について議論する。RoCoCoは、仮想空間で協力行為を行うインタラクティブソフトウエアである。マルチサーバ・マルチクライアント構成を有し、エージェントとして人間と人工知能が参加できる。協力タスクとして、移動、共同運搬、複数家具再配置、ボールゲームなどが構成できる。対話を伴う協力実験により、身体的協力行為中の対話の性質(発話タイミング、物理状況依存、情報理論、意味論、間主観的認知など)を調査することができる。RoCoCoのデモを行い、試験的な実験の結果なども示す。

  • 田中 陸斗, 高木 友博
    原稿種別: 研究会資料
    p. 47-52
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    会議録・要旨集 フリー

    深層学習を利用した対話システム構築において対話データの質と量は重要である.しかし,日本語の対話コーパスは大規模なものが公開されておらず,限られたデータしかないといった問題がある.また,コーパスを用いてend-to-endに学習したモデルはありきたりで短い応答をすることが多く,生成文の多様性が少ないといった問題もある.これらの問題を克服するために,本研究では非会話文を活用して対話データを増やすことで対話モデルの多様性の向上を試みる.ここで言う非会話文とは,web上の文章や小説の台詞などの対話の形式として整えられていない文のことであり,対話データと比較して収集が容易である.逆翻訳とサンプリング生成を用いて非会話文から対話データを増やし,不適切な対話を除去するためのフィルタを通すことでより質の高いデータを獲得する.増やしたデータを加えて対話モデルを学習させた結果,生成文の多様性の向上が見られた.

  • 森本 郁代, 堀内 靖雄, 黒岩 眞吾
    原稿種別: 研究会資料
    p. 53-28
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    会議録・要旨集 フリー

    音声言語による相互行為では、言語情報だけでなくさまざまなパラ言語情報や身振りなどの非言語情報など複数の資源が相互行為の組織化に利用されていることが指摘されている。他方、手話言語の場合、非言語的ジェスチャーと言語の区別が必ずしも明確ではないこともあり、非言語情報が相互行為の組織化においてどのような資源となっているのかについての研究はまだ少ない。そこで本研究では、日本手話会話において頻繁にみられる、手の形状と位置が一定時間維持される「保持」に着目し、保持が相互行為の組織化においてどのように利用され、何を達成しているのかを明らかにすることを目的とする。

  • Li Xiaoran, Takano Toshiaki
    原稿種別: 研究会資料
    p. 59-64
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    会議録・要旨集 フリー

    研究者にとって関連論文の検索は重要である.しかし,その分野についての知識が少ない場合,専門用語のボキャブラリーが少なく,適切な論文あるいは広範な論文を検索することに時間がかかってしまうことがある.そこで,本論文では,研究者の検索クエリからいくつかの質問を生成する手法を提案する.具体的には,Q&Aコーパスを用意し,キーフレーズ抽出事前学習モデルを用いて,キーフレーズ辞書を作成する.そして,作成されたキーフレーズ辞書を用いて,検索クエリから近しいキーフレーズを選択し,検索にかける.これにより,検索者の知っている少ない専門用語からでも広く論文の検索が行えることが期待される.実験では,2017から2022年に公開されたNLPのトップカンファレンスから論文抄録を収集し,提案手法の有効性を検証した.

  • 福田 樹人, 有本 泰子
    原稿種別: 研究会資料
    p. 65-70
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は、不意に笑ったゲームプレイヤーに仮想世界を自動的に反応させることで、現実世界と仮想世界の無意識的なインタラクションを実現することを目指している。本報告では,プレイヤーの笑い声に対して生成したゲームイベントがもたらす心的影響を生理反応(発汗)から検証し,どのようなゲームイベントがプレイヤーを仮想世界に惹きつけるのか明らかにする。実験条件はプレイヤーに有利な効果を与えるポジティブイベント条件と不利になる効果を与えるネガティブイベント条件の2つである。2つの条件を比較した結果,ポジティブイベントを呈示した時に発汗の反応がより増大することが分かった。これまでに分析した心拍や表情筋の結果とあわせて考察すると、笑い声に対するネガティブイベントの呈示はゲームへの注目を高めつつゲーム中の快感情を変化させる一方、笑い声に対するポジティブイベントの呈示はプレイヤーの覚醒度を変化させることが示唆される。

  • 成松 宏美, 熊野 史朗
    原稿種別: 研究会資料
    p. 71-74
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    会議録・要旨集 フリー

    個人がモノに対して抱く感情や印象の推定は,人と関わるコンピュータを個人に合わせてカスタマイズする上で重要である.特に,具体的にどのような印象を抱いたかの言語表現は,カテゴリの選択のみでは拾いきれない情報を含むため,その推定に期待が寄せられる.このような背景から,感情を喚起させる目的で制作され豊富な視覚情報を含む絵画を対象に,印象のカテゴリ選択および言語表現を収集したArtEmisデータセットが公開されている.しかしながら,そこには個人を識別できる情報は含まれず,個人の印象を推定するモデルの構築には適していない.そこで,我々は,日本人を対象に,ArtEmisデータセットの収集手続きを忠実に踏みつつ,個人の識別情報および属性を含む形でデータを収集した.本稿では,個人モデル構築のための予備分析として,付与された印象カテゴリや言語表現の個人属性による違いを調べた結果を報告する.

  • 宮澤 幸希, 佐藤 可直
    原稿種別: 研究会資料
    p. 75-80
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    会議録・要旨集 フリー

    従来の音声対話システムでは、韻律が伝える情報はほとんど扱われてこなかった。したがって、ユーザーは韻律的な情報に頼らず音韻的な情報のみでシステムに意図を伝達しなければならない。このような制約は、人と機械の円滑なコミュニケーションを妨げる。そこで我々は、人と機械の対話において韻律的情報を活用することを目指す。本研究では、ユーザー発話を、意思疎通において不可欠な4つの態度「肯定」「否定」「質問」「考え中」に分類することに着目する。これらの態度は、言語情報とは独立にイントネーションの態度的機能のみで表現され得る。従って、韻律的情報のみからユーザーの態度を推定することとする。まずは、態度推定のための音声コーパスを構築した。さらに、本コーパスを用いて韻律的態度推定器の学習・評価を行った。最後に、韻律的態度推定器を組み込んだ対話システムの評価実験の計画について論じる。

  • 岡田 将吾
    原稿種別: 研究会資料
    p. 81
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    会議録・要旨集 フリー
  • 熊野 史朗
    原稿種別: 研究会資料
    p. 82
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    会議録・要旨集 フリー
  • 北条 伸克, 水野 沙希, 小橋川 哲, 増村 亮
    原稿種別: 研究会資料
    p. 83-88
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,オンライン交渉の対話データから顧客の心理情報を推定するために,顔表情の同期の特徴量を機械学習に導入することを提案する.同調は参与者の様々な心理に関係するため,機械学習による同期のモデル化は,心理情報を正確に推定する上で重要である.特に,誰が同調を先導し,誰が追従したかという情報,すなわち,リードラグ構造をモデル化することは,両者の心理が異なる可能性があるため,重要である.しかしながら,従来手法は,同期が同一フレーム内の特徴の共起を含むという前提に基づいているため,このようなリードラグ構造の構造を考慮することができない.この課題を解決するために,我々は,窓付き時間遅れ相互相関に基づいて抽出された同期の特徴量を用いることを提案する.オンライン交渉対話データベースを用いた実験により,リードラグ情報を考慮することで,心理情報の推定精度を向上させることができることが明らかとなった.

  • 砂岡 和子
    原稿種別: 研究会資料
    p. 89-93
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    会議録・要旨集 フリー

    オンライン会議は五感に代表されるSocial signalの欠損により,Agent間のInteractionが難しいとされる.本発表は,中国語話者集団によるZoom Text Chatで,活発なInteractionが生起する理由を,Participantsの積極的な要請応答と,感謝感情表現に焦点を当て,その要因の探求を試みた.分析の結果,participantsの役割(role)に囚われないMulti-Agent Interactionが,仲間同士の救援・援助表出(要請応答)を容易にし,Joint action(共同行為)を牽引する.GuestやOrganizerへの感謝感情表現の頻出は,共同ゴール認知促進のための助走と考えられる.相互依存的な集合認知と感情遷移の解明から,現行の遠隔授業や対話システムにおけるAgentの積極参与を促すヒントを得られよう.

  • 楊 留
    原稿種別: 研究会資料
    p. 94-97
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/01
    会議録・要旨集 フリー

    大衆文化などのメディア・テキストの消費において、消費者の能動的解釈およびそれによってもたらされる快楽(pleasure)が関与していることは指摘されて久しい。一方、ソーシャルメディアで観察される消費者の感情は、「pleasure」というワードが彷彿させるポジティブなものだけでなく、時には怒りや悲しみなど、ネガティブな感情も含む。本研究は、日本の女性向けのスマホゲームを事例に取り上げ、ゲームのキャラクタを演じる声優がパーソナリティを務めるラジオ番組に送られた感想メールや、SNS上でのプレーヤーによるディスカッションなど、ゲーム内で更新されるストーリーをめぐる消費者同士のインタラクションを分析的に記述する。そこから、メディア消費というコミュニケーション行為において幾多の感情が複層的に生成・表出され、さらには想像上のファン・コミュニティを構築するための資源として用いられる様相を考察する。

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