抄録
Flucsol-DA(FDA)充填による常温下体外循環をHolstein仔牛3頭を用いて行ない, その病態生理について検討した. 自己血を80~85%急速に脱血したのちにFDAを5,500~7,000ml使用し体外循環を施行. 灌流量はそれぞれ42.9, 75.6, 50.0ml/kg/minで体外循環中のHctは3~12%であった. 術後, 1頭は2日後に死亡, 他2頭はそれぞれ174日, 395日後に犠牲死させ剖検した. 体外循環中, 動静脈の酸素配送量, 酸素消費量を測定し, 組織にて消費された酸素の76~84%がFDAによって運搬されており, 灌流量が十分であればFDAのみでも組織の酸素需要はほぼ満たされるという結論を得た. 体外循環終了後のFDA体内残留量が11.5, 16.69/kgと多い例では溶血がみられた. FDA充填体外循環後, FDAは網内系に多く蓄積するが, 1年経過の検査では各臓器内残留はごく微量であった.