人工臓器
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蛋白分解酵素阻害剤FUT-175の血液透析への応用
森河 浄田村 克彦児島 弘臣高橋 淳子衣笠 えり子関口 孝中山 文義高橋 健秋沢 忠男佐藤 昌志北岡 建樹出浦 照国越川 昭三藤井 節郎
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1983 年 12 巻 1 号 p. 75-78

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抄録

種々のプロテアーゼ阻害活性を有する2-(6-Amidino) naphthyl 4-guanidino benzoate (FUT-175; 以下FUT)の抗凝固作用に着目し, 血液透析の抗凝固薬への応用を試みた. 毎時40-50mgのFUTの投与にて, 凝固時間の延長はほぼ回路内にとどまり, 全身血にはほとんど影響がなかったが, 通常量のヘパリン投与では, 回路内・全身血とも凝固時間は著明に延長した. 透析中のFUT濃度ならびに抗凝固効果は比較的安定しており, しかも透析終了後にはすみやかに血中から消失した. 透析中の血小板機能に対する影響ははっきり証明できなかったものの, β-トロンボグロブリンが増加したのに対して, 血小板第4因子の増加はみとめなかった. FUT投与時には透析2時間目に中性脂肪, 遊離脂肪酸の上昇をみとめ, 後者の末梢組織での利用低下が示唆された. 血小板・脂質系などに対する影響についてはさらに検討する必要はあるが, 3ケ月にわたる観察では副作用もみとめず, FUTは出血の危検のある透析患者に有用な超短時間活性の抗凝固剤と考えられる.

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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