抄録
ホロファイバー膜型肺と気泡型肺を用いた実験的体外循環を2時間施行し、ホロファイバー型肺は気泡型肺に比べ、酸素加能にすぐれ、溶血がすくないことを認めた。かかる人工肺性能の向上が手術時の侵襲を少なくし得るかどうかについて各種代謝の面から検討を加えた。
体外循環前値から高血糖がみられ体外循環中持続し両群間に差はみられなかったが、インシェリンはホロファイバー型肺群で早期に著明な増加を認め、I/G比は気胞型肺に比べ有意の改善を示した。乳酸値は両群とも体外循環中増加を続けたが、Δ×L、ΔEhはともにホロファイバー型肺群で体外循環1時間値から好気性代謝の存在を示し、酸素消費率もホロファイバー型肺群で体外循環中から酸素消費がなされていることを示し、気泡型肺群に比べ差がみられた。これらのことから人工肺性能の向上は開心術時の生体に加わる侵襲を少なくし得るものと考えられた。