抄録
現在、臨床医学分野においては治療目的で細胞の輸注あるいは除去を行なう事の重要性が増大している。本研究の目的は、免疫応答で中心的役割を果たす細胞であるリンパ球の亜集団を分離するための合成高分子吸着体を開発し、その細胞輸注あるいは除去療法への応用を推進することにある。その為に、吸着分離の原理としてイオン性相互作用に着目し、弱塩基性のポリアミンを枝に有する一連のグラフト共重合体を分子設計し、その有効性を検証した。その結果、ポリアミングラフト共重合体を吸着体としたカラムを用いる事によって、B細胞をカラム吸着分、T細胞をカラム流出分としてほぼ定量的に分離できる事が明らかとなった。さらに、アミノ基の一部を四級化した部分四級化ポリアミングラフト共重合体を用いると、ヘルパーT細胞とサプレッサーT細胞の分離も可能であることが明らかとなり、これら合成吸着体が細胞分離に極めて有用である事が証明された。