人工臓器
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ブロック共重合体表面における血小板活性化抑制機構の細胞内Ca2+濃度変化による解析
鈴木 憲由井 伸彦岡野 光夫桜井 靖久
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1992 年 21 巻 1 号 p. 228-233

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抄録
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とスチレン(St)とからなるブロック共重合体は表面にミクロ相分離構造を形成し高い抗血栓性を示す。本研究では血小板活性化のセカンドメッセンジャーである細胞内遊離Ca2+濃度に注目し、活性化抑制の機構を検討した。材料表面上に血小板が粘着するとそれぞれのホモポリマーやHEMA-Stランダム共重合体では細胞内Ca2+濃度が上昇するのに対し、HEMA-Stブロック共重合体ではほぼ一定の低い値を示し、初期活性化が抑制されていることが示された。さらに種々のポリマー表面に粘着した血小板を薬物で刺激し細胞内Ca2+濃度を調べると、疎水性のPSt表面では血小板膜上の糖タンパク質の集合状態の変化が、また、親水性のPHEMA表面では細胞膜流動性の増加が活性化の引き金になっており異なる機構が示唆された。これに対しブロック共重合体ではこうした親水性や疎水性の材料との接触に伴う細胞膜の変化が抑えられ、このような効果がランダム共重合体で認められないことから抗血栓性の発現に親水-疎水型ミクロ相分離構造が重要であることが示された。
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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