抄録
超極細ポリエステル繊維製人工血管”Toray Graft” (TG, water porosity 100ml/min/cm2, 120mmHg, woven)のPorosity特性を検討するため人工血管を組み込んだ体外循環モデルを作成し、血液漏出量の時間的推移をプレクロッティング無しの条件下で検討した。対照として”Cooley Low Porosity Woven Dacron Graft” (CG, 50ml/min/cm2)を用いた。希釈ヘパリン化ヒト新鮮全血(ヘマトクリット値20%, 活性化凝固時間値≧1000sec, ボランティア採血)を回路に充填し送血開始直後からの血液漏出量を経時的に測定した(n=5)。循環開始直後1分間の平均漏血速度(ml/cm2/min)は4.32±0.91(TG), 1.61±0.48(CG)となりTGが有意に高かった(p<0.05)。しかし漏血速度は最初の2分間で急激に減少し、それ以降は両群間の有意差は消失した。体外循環下に人工血管置換術を施行する症例にTGを用いる際は適切な前処置を施すことが望ましいと示唆された。