抄録
1975年2月から1981年8月までに19例にHancock豚大動脈弁で三尖弁置換を施行し, 平均9.0±4.6年追跡した. 年齢は34.8±13.0歳, 15歳以下の小児が3例あった. 9歳男児の1例が40ヵ月でprimary tissue failure (PTF)をおこしたが, 成人例16例には平均104±53ヵ月間にPTFはなく, PTF非発生率は10年で94±6%であった. 三尖弁位Hancock弁に関連した合併症は5例(血栓弁・脳出血・PTF・人工弁心内膜炎・弁周囲逆流)に発生し, その非発生率は10年で78±10%であった. 18個のHancock弁を摘出し, このうち左心系弁位と三尖弁位から移植後平均136±25ヵ月間に同一の患者から5対摘出されたが, 三尖弁位のほうでPTFが有意に少なかった(p<0.03). 三尖弁位Hancock弁では抗凝血薬療法は不要であり, 人工弁関連合併症は少なく, 成人ばかりでなく小児例でも耐久性に優れているという結果が示された. これらは三尖弁位での生体弁使用の利点を示しているものと考える.