抄録
10例の弓部大動脈瘤患者に対し, 標準的両側脳灌流法(1群, 4例)と一側脳流法(II群, 6例)を補助手段として用い, 弓部置換の手術を施行した。I群は4例共, 待期手術であり, II群は1例を除き緊急手術であった。II群の一側脳灌流法は超低体温(直腸温21.7±1.5℃)全身低灌流(500-1500ml/min)下で独立したポンプより右腕頭動脈のみに送血し(灌流量300-500ml/min, 灌流圧40-60mmHg)施行した。I群とII群の平均手術時間は508 vs 650min, 体外循環時間は185±11 vs 223±38min, 心停止時間は90±10 vs 130±38min, 脳分離体外循環時間は73±11 vs 99±25minであった。術中脳循環モニターとして両側頸動脈圧及び両側頸静脈酸素飽和度を測定した。I群,II群それぞれ1例の出血死を認めた。術後脳神経学的合併症にそれぞれ脳梗塞があったが, 補助手段に起因するものではなかった。よって一側脳灌流法は簡便で脳保護にも問題なく有用な方法であると考えられた。
