1992 年 21 巻 3 号 p. 834-838
PEGグラフト・セルロース(PC)膜を用いた透析の凝固・線溶系に対する影響を検討した。透析患者8例で, PCダイアライザーと同一仕様の再生cellulose(OC)膜, 同面積のPMMA(PM)膜, cellulose diacetate(CD)膜のダイアライザーを用いてcross-overで透析を行い, 以下の項目を比較した。凝固・二次線溶の指標としてFDP, D-dimer(D), 線溶の指標としてα2-plasmin inhibitor-plasmin複合体(PIC), tissue plasminogen activator(t-PA), 血管内皮刺激の指標としてvon Willebrand因子抗原(vWF)を測定した。Dは膜間で透析中の増加率に有意差がみられなかった。PICは, PC膜が, 他の三種の膜よりも有意に増加率が低く, t-PAも同様であった。またvWFはPC膜でOC膜, PM膜に比べ有意に増加率が少なかった。PC膜を用いた透析は従来型の三種の膜(OC, PM, CD)を用いた場合に比べ, 一次線溶亢進の程度, 血管内皮への刺激が, より少ない可能性が示唆された。