抄録
雑種成犬を用い我々が独自に作製したメッシュ製人工気管で縦隔気管の管状置換実験を行った。人工気管はMarlex® meshとpolypropylene製の支持体よりなり、ブタ・コラーゲンを複合化したものである。雑種成犬6頭を全身麻酔下に右開胸し、縦隔気管の管状切除(1頭は約2cm、4気管輪、5頭は約4cm、7-8気管輪)を行い、それぞれ全長3cmと5cmの人工気管で置換した。5cm人工気管を使用した5頭では、術後材料内腔への喀痰の付着防止の目的で1ヵ月間シリコン製チューブを内挿留置した。施行した6頭は全て術後、吻合部の離開、気漏は見られなかった。4ヵ月より26カ月の観察期間において1頭で内腔の軽度狭窄を認め、5頭で材料の部分的な露出(潰瘍化)を認めた。材料内腔の上皮化は種々の程度で見られ、2cmの置換を行った1頭では頭側端より尾側端まで連続する気管上皮の再生が組織学的に確認された。今後の臨床応用の可能性が示唆された。