人工臓器
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先天性心疾患の姑息的シャント術に使用された人工血管の変化
冨澤 康子高梨 吉則野一色 泰晴今井 康晴小柳 仁
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1997 年 26 巻 2 号 p. 524-528

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抄録
小児に使用された小口径人工血管が評価されることは希であるが、大人の閉塞性動脈硬化症患者に用いられた人工血管の変化と異なることに注目し形態学的に検討した。先天性心疾患で姑息的シャント術を受けた症例の根治術時に6症例8本の人工血管の一部を採取し組織学的に比較検討した。2種類はePTFE人工血管4本と布製人工血管4本で、摘出時年齢は4.2歳、植え込み期闇は11ヶ月から5年7ヶ月、平均3.5ヶ月であった。摘出時に全ての人工血管は開存していた。ePTFE人工血管は血栓形成、内膜肥厚、壁の石灰化、組織の易剥離性が観察され、壁内にはマクロファージのみ存在し線維芽細胞や毛細血管は認められなかった。布製人工血管は内膜は厚く、異型虚細胞が散在していたが、壁を貫通する血管新生が観察され、これは内面の内皮細胞による被覆の可能性を示していた。人工血管の内皮細胞被覆の機序および石灰化の機序を解明する上でも興味深い結果であった。
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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